野火
guest
戦火の焼け野原で
そこに天国があると聞いたから
私が殺した人の死体を埋め
空を見上げた
彼は私を殺そうとした
同じことをされても仕方がない
でも
私は生きていたいと思わなかった
独り言が続く
声に出すことすら億劫だ
じゃあ、何故殺してまで生き延びようとした?
家族が居たからかな?故郷の友達を信じたかったからかな
お前、お前が死んでも構わないんだろ?
誰かが私を殺す
支離滅裂になった心を両手で掬い上げて
なけなしの理性が歌う
空の上に楽園はなかった
私の心の中にだけ咲く花
言葉を置いては城のように積み上げた
いつか現れる王様を護る為の砦
道端で
なんとなく
人が死ぬ
王様の心を護る為
なけなしの理性で
戦火
人が燃えて死ぬ夜にも月は輝く
怖かったのだ
眩し過ぎて誰も何も見えない
目が覚めると中世は過ぎていて
懐かしいねと友達が目を細めている
皆自分が王になるつもりだったんだろうな
でももう奴隷も主人もない
とっくにそんな時代は終わった
何も見なくていい
何も見なくていい
静かに時が私の傷を癒す
まだ街は煌々と燃えている
あすこにも誰かの家族が居るんでしょう
指を差すことすら出来ずに
ただ、茫然と見ているその先で、火は全てを嘗め尽くすまで消えない
空の上に天国があると聞いたから羽搏いたわけではなかった
怖かった
人が人の死を望む
いつからこうなってしまったんだろうと考えることもない
菓子パンをかじりながら、なんとなく昔の恋人に殴られた時のことを思い出す
愛してるとか言ってたっけな、俺達
かみさま、かみさま、と
天使はその名前を呼ぶこともとっくに忘れていたのに、俺達
祈ったんだ