さはれさはれ、去年(こぞ)の雪、今は何処(いずこ)・・・・・・、
フローラ、アルキビアダ、タイス、エロイース・・・、ヴィヨンの古い歌に現れる女たちの美しき名のように、とてもやわらかく冬の空から舞い下りてくるもの。その冷たくなった君の手のひらの水平線にそっと溶け込んでは、その美しき名の響きを音もなく響かせてゆくもの。雪の華。けれどもけっして言問(ことと)ふなかれ、さはれさはれ去年(こぞ)の雪、今は何処?(いずこ)と、その美しき名の姫たちの今は何処(いずこ)?と、けっして言問(ことと)ふことなかれ。その畳句(ルフラン)、ただ徒(いたずら)に繰り返すことなかれ。今はもはや今年の雪の舞い下りるままに、その冬空を見上げる君の白い横顔のままに。その美しき女たちの名、君の手の平に滲みわたり君のとても美しい一部分、となるように。フローラ、アルキビアダ、タイス、エロイース・・・・・・。