うろこ
みぎめ ひだりめ
乾いていて冷たいそれを
おれは か細いからだに縫っている
目や耳や口すら覆っている
輝いたことなど一つもないが
揺れ動かず しんとしていて
煮詰めて固めたざらめのよう
黒々してて 鈍重で
おれを煮詰めて固めたよう
釣瓶が落ちるような雨が降っている
細長い尻尾のような粒たちが
ざあーっ と遠くまで落ちている
おれは乾いて冷たいそれを
つまらなそうに見つめている
なだらかな曲線が光を散らしている
おれは重たい足で泥を縫っている
もうすぐ もうすぐ夜が明ける
それは小さな山だった
ざらざらと軽い石が積み上がっている
灰色風が吹いている
誰かが誰かを悼んだ場所は寂しさが満ちていて
だから祈りはあるんだろうか
おれは身体を丸くして 雲の隙間を覗いてる
まばたきもせず手を合わせ
苦しみさえも縫っている
東が明るくなっている
ざわざわと砂嵐が消えていて
白雲が水を吹いている
風がゆるりと息をして
月がま白くなっている
おれは乾いた手をもたげ
黒いうろこを撫でている
冷たく煮詰めたこのおれの
すべてを散らした哲学が
鏡面に生えたわずかな傷のように
ささくれだって濡れている