MELTense
あらい

やわらかな拍布が身体を包みこむ
賞味期限は 胎児の記憶と似ている

未読メッセージの夜は
すべると太っただけ
するするとすこし 
きらいなスロープが、
こぼれる。

マスク越しの吐息 しっかり錆びて
ふれあった空気はひんやりと重く
とても あかるい ものでした

まず、手をひらく
そしてぬるさを数える
次に、段をふまえて
角をまがらずにすすむ
それから、と言いながら
とがった湿度のなかをくぐる
やぶかずに、ほどく。
ゆかの裏側に貼られていた帯だ
そこに窓はなかった

きょうは、どこまで。
問えば 交差し 絡まり
「苹果」はまだ、始まらない軌道
名前のない花をふむとき磁場があって
動けない。みえないことが水を含んだ
ただ、厚みをもった まえの時間
喉奥を噛むときの骨格が低くわらって

どうせまた、忘れたんでしょ
カーテンは、むこう岸の瘡蓋

Bluetoothの波は遺言
模倣するレトルトの海をあたため
視界のはしが ふるえて、炙れる
透明なスープは唇にたちすくみ
あふれだす腿も 覆いかぶさる
焦げたトーストが、腐らせてく
足裏のない歩行がいちばんにふるい声
靴のなかに、雨がいるだけ。

なにを、食べたの
たとえばこれが、細く長く
「檸檬」という名の動作
ほんとうのすこしのまだけ
身篭ってしまったなら

銀の はしら の部分で
砂に すべての、寝息のひとつ、
かすかな くちやかましさ
そのうえ、折りたたまれる


自由詩 MELTense Copyright あらい 2025-09-07 20:56:26
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