そっと だいじに 二篇
唐草フウ

わたしが森でじとじとになっていたとき
ショコラウサギのおかあさんが
やさしくガーゼで顔をふいてくれた
ホームのベンチにひとり座って
走り去る夜汽車を見送っているだけでは
ありえない出来事だった
かみしめた痕のついたおしゃべりなくちびるも
びしょびしょになった静かなまつ毛も
こころの季節なんて関係なしに
受話器もおいたままで
やさしくやさしく拭いてくれた
そのうち小鳥たちが揺れながら
迎えに来るからねと





大きな砂時計くらいの距離を
42cmの距離をしっかり保つ
朝の人とスワンでお話をした
本当の姿は
話してくれないけれど
聞かなくてもよかった
きらりとした月のお話をして
距離をおいて横向きに並び
シトロンモーネを美味しそうに食べた
変わっていくことも
待っていることも
わからないでいることも
見えないことも
それでいいんだよと

たばこを吸うのかと思ったら
ココアシガレットだった
関係だとか 交わりとか ではなく
その手前でいられることが
何より大事なことだと
いつでも思っている
朝の人は「じゃあ」と言って
トミカのはとバスに乗って
去っていった





自由詩 そっと だいじに 二篇 Copyright 唐草フウ 2025-09-03 07:40:02
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