そっと だいじに 二篇
唐草フウ
わたしが森でじとじとになっていたとき
ショコラウサギのおかあさんが
やさしくガーゼで顔をふいてくれた
ホームのベンチにひとり座って
走り去る夜汽車を見送っているだけでは
ありえない出来事だった
かみしめた痕のついたおしゃべりなくちびるも
びしょびしょになった静かなまつ毛も
こころの季節なんて関係なしに
受話器もおいたままで
やさしくやさしく拭いてくれた
そのうち小鳥たちが揺れながら
迎えに来るからねと
◆
大きな砂時計くらいの距離を
42cmの距離をしっかり保つ
朝の人とスワンでお話をした
本当の姿は
話してくれないけれど
聞かなくてもよかった
きらりとした月のお話をして
距離をおいて横向きに並び
シトロンモーネを美味しそうに食べた
変わっていくことも
待っていることも
わからないでいることも
見えないことも
それでいいんだよと
たばこを吸うのかと思ったら
ココアシガレットだった
関係だとか 交わりとか ではなく
その手前でいられることが
何より大事なことだと
いつでも思っている
朝の人は「じゃあ」と言って
トミカのはとバスに乗って
去っていった