プラスチック
たもつ
悲しみより澄んだ夜明けの
集配室から発出した文書が
まだ届かない、と
先方から連絡があった
わたしはベンチで
草のための列車を待ちながら
遅れがちの頁をめくり
しおり紐の形を触っている
一羽のカラスが
光るものを大事そうに咥えて
ホームの端で跳ねている
わたしが子供の頃、宝物にしていた
綺麗なプラスチックの破片は
やがて意味をなくして
ある日、ゴミ箱に収まった
思い出すことも
忘れていくことも
同じ重さなのに
他には何もなかったのに
小さな波音をたてて
列車が到着する
そのシートやつり革の
冷たい感触を思ったとき
父が養子であることを知った