曳航
藤原 実
夏を浪費する素足の少女たちよ
居留地の海岸で手を振り
明日 明日 また明日 と
仮借なく絵札を覆してゆく
向こう見ずな天使たち
─── ごきげんよう 波打ち際のマクベス!
と ぼくをからかいながら
《さらば夏の光よ つかの間の》
昨日は確かにおまえたちの季節だった
ぼくたちは星座表を回転させたり
堤防でマッチを擦り尽くしたり
思い出は 夕暮れの影
あしもとから ながながと伸びて
重ねられた比喩となって たそがれの街の風景に溶けてゆく
だから さよならをいうとき
影だけがぼくから離れてゆき
憧れに身を隠す
青春の形見分けを一篇の詩にして
こうして毎朝 食卓の上に置いていく ぼくは
これから一日一日 少しずつ 軽くなってゆくだろう