万華鏡
秋葉竹




振り向いてしまえばいい
振り向いてしまえばいいだけなのに
振り向いてしまえないのがもどかしい
君の瞳のなかにキラッキラの
万華鏡がみえるのがわかるから


世界はこんなにトゲトゲしいから
まばたきをするたびに
心に傷が血を流しつづけるんだね
君は真夏の夜でもじぶんを抱いてた

闇堕ちした彼女の
友だちだった君の
許せないほどやるせない想いが
瞳をガラスにしてるんだね
でもね
実は
真夏の匂いを嗅ぐ僕は
雨が降るまえの匂いも嗅げるよ
だから少しは
君の香りの闇属性も知ってるんだよ

笑わずに暮らした時間が
遮二無二こぼした欲望を固めてしまい
だから僕には疲れているようにみえる
君の『愛情』は
鎖と鉄球が絡まってしまっているようだ

少しは持ってる余白を
余白だけを持っていくから
顔をあげて君は
彼女へのメッセージをしっかりと書けばいい
しっかり太めの油性のマジックで
『愛しています』と

早く秋に成れればいいな
なんて陳腐で軽めで真っ赤な嘘が好き
そして風に吹かれる
錆びた空き缶を拾ってゴミ箱に入れよう
綺麗サッパリさ

君が口にする想いの意味がわからない
『ありがとう』だなんて
それは僕に云う言葉じゃないよ
その絶望の言葉と時間を埋める
新天地を探しもとめて
僕はゆくよ


振り向いてしまえばいい
振り向いてしまえばいいだけなのに
振り向いてしまえないのがもどかしい
君の瞳のなかにキラッキラの
万華鏡がみえるのがわかるから









自由詩 万華鏡 Copyright 秋葉竹 2025-08-23 09:22:20
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