無常戦争
本田憲嵩
いつまでも夏のつもりでいた、
あかるいひるねがとつぜん風船のように射抜かれて、
緩慢な夢からついに目醒める、
夏だった風がとても涼しくなっていて、
その涼しさがそのまま寒さの鋭い刃となっている、
階下から郵便屋さんの赤いオートバイの音が聞こえてくる、
郵便物を取りに階段を下りて玄関口へ向かうと、
その戸口のうちがわには、
負傷して逃げ込んだ兵士のように、
いっぴきの茶色いトノサマバッタが息絶えている、
いよいよ秋という名の戦争が始まる、
無常という名の戦争が、
自由詩
無常戦争
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本田憲嵩
2025-08-23 02:51:15
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