scratches
塔野夏子
把みきれない現実に
心が過剰で収拾がつけられない
はみ出してゆく言葉たちが
僕を取り囲む時空に傷をつけてゆく
瞳はいつも怯えたように見開かれてしまう
何故対峙してしまうのだろう
何故融合できないのだろう
時空に刻まれた無数の傷は
やがて解読不能の暗号となって
僕に降り注ぐ
拾い集めようとする指は震えるばかり
耳には乾いた雑音がずっと聴こえている
終わりがあると知ってはいるけれど
それは僕が在るうちにやっては来ない
だから言葉ははみ出しつづける
あるいは僕に降り注ぐ暗号が
いつか僕をかき消すかもしれない
僕を取り囲む時空ごと
解読不能の中に消去するかもしれない
瞳はいつまでも怯えたように見開かれたまま