scratches
塔野夏子

把みきれない現実に
心が過剰で収拾がつけられない
はみ出してゆく言葉たちが
僕を取り囲む時空に傷をつけてゆく
瞳はいつも怯えたように見開かれてしまう
何故対峙してしまうのだろう
何故融合できないのだろう

時空に刻まれた無数の傷は
やがて解読不能の暗号となって
僕に降り注ぐ

拾い集めようとする指は震えるばかり
耳には乾いた雑音がずっと聴こえている

終わりがあると知ってはいるけれど
それは僕が在るうちにやっては来ない
だから言葉ははみ出しつづける

あるいは僕に降り注ぐ暗号が
いつか僕をかき消すかもしれない
僕を取り囲む時空ごと
解読不能の中に消去するかもしれない
瞳はいつまでも怯えたように見開かれたまま







自由詩 scratches Copyright 塔野夏子 2005-05-31 21:49:01
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