苦しむなそして止めなくてもいいが悲しむ必要はない
杉原詠二(黒髪)
わたしは苦しんだ
あの人は悲しんだ
持ち場が違ったんだ
荒っぽいことはわたしたちがやる
愛することはあの人たちがやる
わたしたちはどんな苦しみにも己を忘れずに耐えぬく
あの人たちはどんな悲しみと涙の中でも己を忘れず人に微笑んでみせる
わたしの煩悩が幾重もの苦しみを生んだ
あの人の孤独が際限のない悲しみを生んだ
わたしたちはお互いを欠いていたんだ
一緒になるとき
幸せは成就する
冷える夜になったら思考をすまして
試みに考えてみよ
苦しみを終えたときその苦しみが何だったのか
悲しみを過ぎたときその悲しみの貴さがどれくらいか
いつか分かるだろう
人として生きて行くことは
苦しむわけではなく
悲しむためでもない
慈悲の心が輝きを増してくる
わたしたちは
それぞれに愛したけれども
過ぎた愛は
永遠に届かなかった
永遠に愛するために
わたしたちは掌の上に
慈悲をのせた
わたしたちは教え合った
苦しみながら
道に迷いながら
ときに教え合い
生を歩んだ
よき関係と呼べないだろうか
愛によって結ばれるのではないだろうか
もし望みさえすれば
あなたはわたしを望むかな
わたしはずっとあなたを望みつづけた
今世の孤独を逃れることが出来たなら
わたしたちは手を握り合おう
会って手を取って握り合おう
光と水と花と風がわたしたちを再構成する
縁が苦しみを生んだのなら縁によって苦しみを滅することが出来る
すべての苦しみが消えたとき
わたしたちは光と花になる――