夏
ryinx
夏、相変わらず
碌でもない 夏
ことしの夏は
ニューオーリンズで
スノーボードしてる
ゆめをみていた
ことしの夏は
アラスカで
熊狩りをしていた
夏 ことしの夏は
ナイアガラの滝をみている
「ゆめでも見てんのか」
「そんな口調でいう必要ありますか」
「だって……」
受話器が切れた。
俺の頭も切れた
夏、
暑すぎる 夏。
今年はさ
氷河期に突入するらしい
夏
夏
夏
ゲシュタルト崩壊する 夏
「え」
夏、
夏なんてなかった
夏、
おまえのみているのはなつの
イメージだ 夏
くりかえされる夏と
フレーズ
「意味がわからねえよ」
夏
昨年の夏は
氷河期だった 夏
昨年の夏は
アルコールに溶けてった
夏
えいえんってなに
アイスクリームの溶ける
一瞬の
その手前の時刻に
その
すこし前の季節
「それって季節なの」
「知るかよ」
すくなくとも意味不明だ
そいって過ぎ去った夏
春の前に夏が来て
冬の後に秋が
そういって
今年の夏も過ぎてゆく
夏
ぼくには夏なんてなかった。
ぼくには春なんて なかった
ぼくには
ぼくはシベリアにいた。
ずっとまえのはなしだ
ぼくはカナリアを世話してた。
もっと前のはなしだ
なつ
そういう名前の女がいた
ハンドルネームだ。
夏、
夏、
夏
夏
夏
夏
そうして
またゲシュタルトの意味を
調べた 夏
母の声も溶けてった 夏
俺には見えなかった
窓の外の黒い車が
俺には聴こえなかった
街路の歩道で話す黒服の声が
ぼくにはなにもわからなかった 夏
夏の意味がわからなかった 夏
夏期講習で掛け算を指導された
夏
なにもない
夏
夏休みは青森で過ごした
きのうの話だ。
きのうの
昨日の
夏、
夏
どうして青いのだろう
夏
どうしてすぎてゆくのだろう
夏
夏、いつもの夜
線香花火を焚いていると
夏、いつもの街で
マイナスドライバーをさかなに
アイスクリームを食べていた
夏
夏
夏