This Night
リリー

 心の跳ねとぶような白に
 目を見張る
 おおよそ神秘な所で
 香り咲いた月下美人
 
 一夜、月の輝きのなかへ
 身をなげだし
 実もつけない花の
 湧きあがる純白は何故
 そんなにいそぎ
 どこへ行くのでしょう
 もう 萎れてしまう朝に

 純真さが迫る
 希望も絶望もなく
 無量の香りの重みは呼吸の度
 しみいってきて 
 永遠がつめたい影をおとしていく

 今を生きるむずかしさ
 只わたし
 良い人でもなく
 悪い人でもなく
 老女となり死する生命あることの
 逃げ場のない餓えも
 みにくさも感じるのです

 だからこそ
 一夜、無心に咲き切る花のように
 もっとも単純な心で
 憧れを持ちたい
 

 
 

 

 
 


自由詩 This Night Copyright リリー 2025-08-20 07:05:37
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