なにかを知ってしまった男
鏡文志

なにかを知ってしまった男は、そのなにかを語ることを躊躇うだろう
なにかを知ってしまった男は、そのなにかを刻みつけるために、書き記すだろう
なにかを知ってしまった男は、なみだを流すことを止めて、天空の空高く舞い始めるだろう
なにかを知ってしまった男は、なにかを知ってしまったことを決して後悔はしない
何故なら、そのなにかを知るために、自分は、生きてきたのだから
なにかを知ってしまった男はボール遊びのようにそのなにかを追い続け、そのなにかは決して彼の足元から離れようとしない
なにからなにもかも何度でもそのなにかは、彼の脳裏の中をよぎり続けていた
なにからなにもかも何度でもそのなにかは、彼の人生と心の中にあって、正気を促しながら、岸辺へと誘い続けていた


自由詩 なにかを知ってしまった男 Copyright 鏡文志 2025-08-20 05:26:44
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