横浜へ
花野誉

新横浜駅を降りてから

どうやって そこに辿り着いたやら

彼が教えてくれた家の間取りは

手紙に描かれた図の通り

他愛も無い話は ビールを飲みながら

お互い 何を考えているか分かっていて

夜が深くなり

私たちの好きな〝くるり〟の話をする

  「ばらの花みたいなのはイヤだな。」

そう言ったのは どっちだっけ?

それが合図で 私たちは近寄る

小さな嵐が大きな嵐になって

この人の胸の内を識る

哀切極まりない情熱に

歓びの中にいながら慄く

冷たい影が過るのに 

肌の熱は上がっていく

そうやって 朝までに

私たちは 

私たちを踏み込んだ


新幹線のホーム

私が独身最後に見たその人は

いつものように静かで

ただ あの細く長い指は

私の指を絡めたまま

















自由詩 横浜へ Copyright 花野誉 2025-08-19 19:33:33
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