明暗
降墨睨白島(furusumi geihakutou)
めあーん、メアーンだか、めいあーん、メイアーンだか猫が鳴いている。猫の鳴き方には詳しくない。詳しくないまま聞いているとどうやらメイアーンと聞こえる。メイアーン、メイアーン、明暗。何が明暗だ。本人は、いや本猫は鳴いて食い扶持稼ぎ、煩いと窓閉めてはすぐに気になりイワシの炙りを投げてやる。あっという間に咥えておさらば。いい気なもので何が明暗だ。
明るい兆しと言えばひさしぶりに女から手紙が来た。メアーンとは鳴かない人間の女。元気かと我が身を案じているとのこと、すぐ会いたいと手紙を書いた。すると数日中には訪ねて来るらしい。そのまま一緒に暮らしてもいい。
明るいのはそれくらいで、他は暗い。酒ばかり飲んで酒代に詰まり、ろくな仕事もしていないのに着道楽で泡銭。きりきりしながら過ごしているから人間が歪む。歪んだ頃に猫が来る。馬鹿にされているようだ。と、また来た例のメアーンだ。今日は何もやらないと思い、顔を見たら追いかけよう。果たしてメアーン、メアーン。がらっと窓を開けたら驚いた。猫ではなくガキだ。腹が立ったので砂利銭を投げてやった。さっさと拾うとわーいと言ってとんずら。腹が立った。子どもにまで馬鹿にされて、ではない。投げなきゃよかった砂利銭を。あれで、日本酒のコップ酒が一合は買えたんだ。