GIFT
あらい
どきどきに すこし
ぬれていく ものたちが
わたしのために 毎秒
再生ボタンを 押してしまった
ドレンホールにむかって
熱のないカップを 頬ずり
ほとぼりのように、かきまぜている
“PLAY”──ほら、いま、ひと口
ちょっと かんがえて
ひじを うごかして
1cmだけ 重力にまかせた
マリア。
ぼくの うちがわが
すこしだけ
わたしを なでていく
ねえ、キャンディ・フィルム
吐き出して、しまいたい
わたし ちいさく そっと
立ち上がる
生きて、いる
いまここで いきしている
いまここで いきしていた
いきちがえている/わたしじゃない
もう、へんじしないで
ついには するりと 全部 入ってきた
ふくれたママの 蛇腹に
やや咲いた 花柄らんぷに
ヴィンテージクロス
マチのない身体に 虹のよう ときめいて、
折り重なる くらげのひかり
パフェグラスを たおすように
アンティークバスケット 縋るように
エスカレーターの手すりを 握っていた左手
触れた。
ふれていたはずの ハズを すべらせた。
観察記録を ちょっと はがしたら
たしか、室温21、湿度74
きし、と 肌理はなし
かるく濡れた 景色で フタを、
ゆるく 透ける 92°
きもちよい シダの庭では
ほつれた微笑みが すっと ゆるみかけて
モノカゲが 息をひそめては 近づく
ああ、それは 懺悔じゃない
いまや ヘアピン二本
うれい 編まれた トルソ、
サテン地の ballet shoesで
カタコトが 炙りだす
水たまりは すでにメモリー
干し忘れたハンカチも
→いきしていた
→いきしなくなって
→いきは、もう、おくだけ
ひからびた切手を 七枚 いきしている
まだ 誰にも渡されていなかった
あのまちの マカロン
92°、ゆるくすける。
94°、すこしやける。
98°、じゅっときえる。
“REWIND”──フィルムにこぼれる
噎せかえる キラメキが すんで
うしろめたさで いきをして
息してた。
息してないように してた。
息のフリで すすんでた。
いきのつもり。
つもりのいき。
こう しよう
“inject.”
──やりなおしませんか。
そのとき
ひゅう、と 細く、ベイベー
海の靑は 一粒の glass.voice
そこに、いきましたか
またたきに 耳をかたむけて
ソウマトウの粗野を のたまう
ああ、見える/404
喉元に ひっかかる 四角いカナリア
羽根を 休めて なに 見ているの
──ビー、ピ、ピ、ピ――IYAN
ここから、あなたの本体は 不在です