おひとり様
リリー


 築年数四十年を過ぎた中古マンションで
 今夏暫くの間、我が家でも玄関ドアの脇に
 宅配弁当業社の貸出しボックスが
 配置されるようになった

 すると挨拶を交わすご近所さんから
 「元気にしてるの?」
 「体の具合どう、だいじょうぶ?」
 さりげないお心遣いのお言葉をいただいて
 ご年配の人からすれば、
 家庭も持たないでいる中年の女性に対して
 当然の解釈なのでしょう

 けれども、この物価高で食材にロスを出さず
 一人前の食卓を遣り繰りする事は難しい
 全体的なコストで考えると宅配弁当の方が
 出費をおさえられる
 同じ惣菜ばかりを食べなくてもいいし
 偏食が無ければメニューの楽しみもあって
 暮らしやすさは、人目を気にして
 成り立つものでもないだろう

 職場から帰宅すると
 何となく想像してしまう
 私のための一食分を届けてくれている
 顔すら見たこともない宅配スタッフさんの姿
 これもありがたい蜘蛛の糸みたいな
 繋がりに思えるのです。
 
 
 
 
 

 


自由詩 おひとり様 Copyright リリー 2025-08-17 10:32:05
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