にっぽん戦争無責任論
室町 礼
米国の秘密文書「オレンジ計画」が明らかに
なった今、真珠湾攻撃から原爆まで米によっ
て仕組まれた戦略であったことが明らかにな
っても、まだ「日本の戦争責任」というとき
それは米が望んだように中国大陸侵略という
資源確保のための暴挙に出ざるを得なかった
日本人の心の問題に遡る。
それすら軍部よりも当時の
メディアが国民を先導したことに因があると
してもあえて"日本の戦争責任”なるものがど
こにあったのか考えてみようとすると、やは
り"あのこと"に行き着かざるをえない。
つまり終戦記念日に甲子園球場で全員が起立
して静かに黙祷を捧げ、サイレンが鳴るあの
儀式、あの儀式の裏にある"構造"がまさに日
本が無謀──ではなく無理な戦争に向かわせ
られた根拠、構造を示すもののひとつではな
いかとおもわれるのです。黙祷の儀式の最中
に後ろ向いて弁当食べる者がひとりもいない。
これが問題なんじゃないかな。
それはあの壮大な虚構であるコロナ騒ぎで一
斉に自粛してマスクを離さなかった日本社会
の異常さと重なる。
黙祷だから「いいことだろ?」と井上陽水の
『傘がない』
の歌詞のように問う人がいるかもしれないが、
こんなものは作家や批評家たちが、海外で大
規模ドンパチが起きるたびに善意を宣伝する
ためにする「反戦声明」と同じで敬老の日や
勤労感謝の日という区切りの儀式となんらか
わりない。だれにも同じことを強いる儀式は
むしろ国民から思考を奪う残酷な構造をもっ
ている。
それを戦後最初に指摘したのが山本七平の
『空気の研究』だった。山本七平というと戦
後の朝日新聞とそれに寄生する知識人からウ
ヨク国粋主義者みたいな無茶なレッテルを貼
られた言論被害者だけれども実際には、山本
七平は戦前から反体制、反権力の人だった。
あの帝国的天皇制の時代にあって三代つづい
たクリスチャンの家に育ち、
(当時は「耶蘇」といって異端者扱いされて
いた)そして、父方の遠縁には大逆事件に連
座した和歌山グループの大石誠之助がいる。
こんなだから官憲には睨まれ日本社会ではア
ウトサイダーとして生きていた。とこ
ろが彼にも21歳のとき徴兵令状が来る。
出向いたのは当時地獄の戦場、生きて帰れぬ
といわれたフィリピン戦線です。偶然かれは
生き抜いてフィリピンの捕虜収容所で敗戦を
迎えるのですがそこで彼が驚いたのは彼以外
の捕虜全員がけろっとして「さ、頭を切り
替えましょ」という。「これからは経済だ」
というのです。これが日本人としては異邦人
として孤立して生きてきた山本にはわからな
い。つまりそこには何の反省も葛藤もない。
「これからは民主主義だ。平和だ」というま
えにそれそうとうの思考の過程が必要なの
ではないのか。よそ者として生きてきた山本
七平には理解できない。昨日まで必死の形相
で唱えていた一億総玉砕は?本土決戦は?
つまり山本にしてみれば泡のように生まれた
民主主義や平和主義は泡のようなものではな
いのか? という疑問が生じる。
葛藤もなければ深い内省も、連合軍の押し付
けた倫理への抵抗も、東京裁判の徹底的な検
証もなにもかも曖昧であやふやなくせに、
「平和」「反戦」「日本人は悪かった」など
ばかりが舞い上がる戦後の言論に対してその
ような疑問が生じた
けれども、単独者としての山本は戦後も三十
年間じっと沈黙を守る。
かれが口を開いて日本人の「空気」を指し示
したのはおそらく〈煮詰まり〉が原因でしょ
う。物事はなんであれ〈煮詰まる〉とろくな
ことにならない。しかし深い葛藤も内省もな
くへらへらと平和、反戦、反差別を口にする
泡のような言論情況に当時彼が口をはさむこ
とは、せっかく日本人を洗脳して飽食平和に
酔わせることに成功した国際巨大資本にとっ
ても非常に不愉快なことだったのではないだ
ろうか。かれはまさか!「右翼言論人」のレッ
テルを貼られて徐々に言論界から駆逐された。
と、わたしは思っている。
戦争をはじめたのは日本人のこの「空気」な
のだけど、今、この「空気」はしきりに反差
別を振り回している。「ハイガイ主義反対!」
なんて、がなり立てている。でもわたしのよ
うな単独者からみれば「アホか」の一言なん
ですよ。頭のいい悪い。知識の高じゃないの
です。単独者から言わばですね、見ててご覧、
「ハイガイ主義反対!」この詞がすぐに手の
ひら返しで「一億総玉砕」になりますから。
わたしは「空気」の外側にあらかじめ排除さ
れた吹けばとぶような観察者ですからふつう
にそのことが綺麗に見えます。
共産党の「党派的」な功利に偏った戦争責任
論など論外ですが吉本らが語りはじめた文学
者の戦争責任論は文壇詩壇にて80年間は語
り続けられなければならなかった。
その責任を捨ててクソバカどもが何が戦争反
対だ。なにが「プーチンの不条理」だ。へそ
が茶をわかす。といいたいですね。