ぼくたちの神様
yo-yo

かなりむかし
子どもの頃には神様がたくさんいた
崩れそうな石段を登ってゆくと
空がだんだん近くなって神様が降りてくる
樹齢千年の銀杏の樹のてっぺんに
神様はいらっしゃるのだ と神様が言った

神様はいつも白いきものを着ていた
髪もひげも白かった
かしこみかしこみ と言った
ぼくたちもかしこみかしこみ と言った
すると神様は笑った

神様はとにかく偉いから
紙と鋏でひとも車もつくってしまう
神様がつくるものはぜんぶ神様だから
年寄りはひらひらの形代かたしろにお祈りする
かしこみかしこみ
五穀豊穣 家内安全 交通安全

秋祭りが終わると
もう神様もお帰りなさった と言って
神様は淋しそうに落葉を掃いている
神様はどこへお帰りなのですか
それはね山の奥だよ ほれ
山はもう沢山の神様で真っ白になっていた

でも神様は鳥のように空を飛べるから
どんなことでもお見通しなのだよ
と神様は言った
からすも天空にいるときは神様かもしれない
とんびも孤独でひまな神様かもしれない
そんなら神様も
日暮れになったらおやすみになるんでしょうか

ぼくたちは好奇心が強い
夜更けの大銀杏は黒い化けもの
まるで神様の夜番をしているようだ
千年のどでかい闇をかいくぐって
ぼくたちが目指すのはちっちゃな明かり
かすかに湯気を吐きだしている小窓
斥候がくすりと笑って耳打ちした

かしこみかしこみもうす
ただいま神様は風呂に入って
美空ひばりを熱唱中




かしこみかしこみもうす=(祝詞)恐み恐み白す







自由詩 ぼくたちの神様 Copyright yo-yo 2005-05-31 18:00:58
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