サバンナの掟
ちぇりこ。

ある寒い冬の休日の午後
裏庭にサバンナが置かれていた
誰かが昨夜のうちに
ダンボールの中に入れて
遺棄したのだろう捨てサバンナだ
今年の冬は
乾燥注意報が頻繁に出ているので
草丈の短いサバンナだった
ダンボールから取り出すと
待ち構えていた熱風が頬を緩ませる
ぼくはサバンナの掟に従い
上半身裸でゴム草履
サバンナでは既に
丈の短い草をヌーの群れが食んでいた
臼歯ですり潰される葉緑素の匂いが
乾燥した熱い風に混じり
肉食獣を呼び込んでいる
群れのリーダーが危険を察知すると
群れは一つの
大きな生き物のうねりとなり
サバンナを駆ける
群れの中の比較的若い雄が捕食された
肉を裂く音、骨を砕く音が
乾燥した午後のサバンナに響く
捕食するもの捕食されるもの
どちらのカテゴリーに
ぼくは分類されるべきなのか
サバンナの掟に従い思案する
乾いた大地に血が吸われてゆく
血の匂いを嗅ぎ付けて
リカオンやセグロジャッカルが
上空にはハゲタカ数羽の弧が
草原の分解者の
ネットワークは拡がってゆく
大地に染み込む残された養分は
草丈の長さを決めるのだろう
どのカテゴリーに
分類されるべきなのか
選択を迫られる
イクチオステガが
陸に初めて上がった日から
ぼくらは選択を迫られているのだろう
ぼくは思案する
サバンナの掟に従い
上半身裸でゴム草履で


自由詩 サバンナの掟 Copyright ちぇりこ。 2025-08-11 14:41:13
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