真眼
杉原詠二(黒髪)

眠っている間に夢を見る
起きている時にも白昼夢を見る
将来の夢も見る

正しく見られた夢は
限りない力を持つ

もっともよい夢は
人を究極に救うこと
つまり
発菩提心である

真の眼を取り戻すために
三十年以上の月日が過ぎた

わたしの宿願は今かなう

すべての無明が晴れ
悲しみのすべてが薄れ
心が純粋な喜びに満たされる

時は満ちたり

澄み渡る光がすべてをひとつにまとめる

歪んでいた空間のすべてが元に戻る

空が青いのは偶然ではない
雲の向こうに青き感情が流れているのだ

世界にたったひとりではないから
わたしの情は人に伝わる形になっている

宇宙の孤独の中で
地球は己と生命の心を借りて
長き青色の夢を見続けてきたのだ

四季折々を共有する祖国
永遠の青のキャンバスに
たくさんの色の絵を描いた

その根底にあるのは人間の心
赤い血の色を持った
愛の心に他ならない

乙女の桃色に染まった頬
夢に色を付けるならば
それは乙女の色がいいだろう
たおやめを慕うますらおは
青き心持ちて乙女に対する
青き地球の上にて
泥の中に桃色の蓮の花が開いていく

一切苦の消滅に
空は光り
虫は鳴き
地は揺れることを忘れ
幸福の時代が訪れる

幸せは透明な詩情に乗ってやってくる

大気は透明だが宇宙から来た光が
散乱して青に映り
空を青色に染めている
宇宙と地球が
青色の交響曲を四十六億年奏でている

南北の国に格差がなくなっても
地磁気は北から南へ流れ
コンパスの針のN極とS極は
変わらぬ方向へ振れる
愛の地図を辿るのに
方角を定めることが必要なのだ
生物は地磁気を感じて
本能によって方角を知るのだ

わたしたちの心の針は
常にお互いの方向を知っている
やがて帰っていく場所は
すべての心が寄り添う場所にある


自由詩 真眼 Copyright 杉原詠二(黒髪) 2025-08-10 15:58:02
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