八月九日
たもつ
午後になった
扇風機をとめて
水を届けに出かけた
ひび割れた路面と短い影
歩く時も俯く癖があった
草刈の辺りで風鈴売りとすれ違う
音、聞いたのだからお代を、と
干からびた掌を差し出してくる
俯いたままでいると風鈴売りは
何も取らずに去っていった
途中、何度か水をこぼし
我慢できずに口をつけ
着く頃には半分ほどに減っていた
逃げ水か
と主は言った
冗談なのか本気なのか
終始、顔を
上げることが出来なかった
自由詩
八月九日
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たもつ
2025-08-10 06:17:20