あの子のいる夏
花野誉
夏休みがくる
あの子がいますように
いや、いませんように
毎年 祖父母の家で暮らす夏休み
解放される天国の季節
いつからか
夏休みに必ず出会う少年
透き通る白い肌 細い手足 子猫のような口元
ランニングシャツと短パンが恐ろしく似合わない子
この田舎にしっくりしない子
小利口な様子が鼻につく子
畑で転んだか 蝉の死骸を踏んづけたか
泣きながら 私を呼ぶ
しゃがんで見上げた顔
ビー玉のような大きな目から
ポロポロ ポロポロ こぼれる涙
─なんて、きれいな目
ずっと見つめていたら
その子は何も言わなくなった
そして夏休みは
嬉しいような 怖いような
そんな季節になった