あの子のいる夏
花野誉

夏休みがくる

あの子がいますように

いや、いませんように


毎年 祖父母の家で暮らす夏休み

解放される天国の季節

いつからか

夏休みに必ず出会う少年

透き通る白い肌 細い手足 子猫のような口元

ランニングシャツと短パンが恐ろしく似合わない子

この田舎にしっくりしない子

小利口な様子が鼻につく子

畑で転んだか 蝉の死骸を踏んづけたか

泣きながら 私を呼ぶ

しゃがんで見上げた顔

ビー玉のような大きな目から

ポロポロ ポロポロ こぼれる涙

─なんて、きれいな目

ずっと見つめていたら

その子は何も言わなくなった

そして夏休みは 

嬉しいような 怖いような

そんな季節になった
















自由詩 あの子のいる夏 Copyright 花野誉 2025-08-09 15:03:05
notebook Home