蝉
秋葉竹
裏返ってるヤツは、死んでいる
うつ伏せのヤツは、鳴いて飛び立つから注意
なんとなく
そんな風に教えられてたのかな?
いまもそう想ってるよ
でも
いつもの朝の散歩中に
横向けになって死んでるヤツをみて
よく云うよね
何年も土の中で過ごして
光の当たる地上に出てきてから
自由に歌い
自由に飛び回りつづける
そしてそれも
1週間で
その命を閉じる
命を閉じるとき
横向けになったヤツは
なにを考え
なぜその死に様を選んだのか
ふと想ったけど
ヤツは僕なのかもしれない
だれにも好かれず愛されず
なんて口では云いながら
身に余るほどの優しさを
この身に浴びている僕の
少しひねくれた生き様の
果てがあの姿なのかもしれない
なんて勝手に想いながら
その蝉を土の中に帰してやろうかと
身を屈め指で触れると
大きな声で鳴きながら
青空高く飛び立って行った
あはは、
あれば僕だ
まさしく、僕だ
だから僕は
もうみえなくなった青空の高みを
太陽の光に負けないように
いつまでも晴れ晴れとみあげつづけていた