Mother
りつ

絶望し尽くしたその先
あらゆる虚しさが吹き荒れる突風の果て
自らのいのちすら
捨て去ろうと試みた乾いた諦めのなか
ぱっくりと開いた傷口もそのままに
静かに君が座っていた

こんなにも永いあいだ
こんなにも冥いなかで
何も映さぬ生気のない瞳で
ひとことも喋ることなく
座していた

牢獄の扉は開いていたのに
君は出ていこうとはしなかった

わたしは母になりたかった
母になって
あなたを抱きしめ
護ってあげたかった

あなたのせいではない
痛いほどそう想いながら
やるせない牢獄の天井に星を散りばめた
ね?仄かに明るくて、とても綺麗
君の瞳がちらりと揺れた
優しく手を繋ぐと
あなたの虚しい眼から
ひとすじ
涙がこぼれた

わたしがいる
ふたりなら寂しくないよ

と笑いかければ

はじめて君は驚いたようにわたしを見つめ
にっこりと微笑んだ


自由詩 Mother Copyright りつ 2025-08-06 13:44:25
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