反語
杉原詠二(黒髪)
反語を
真に受けてしまい
申し訳がない
わたしの智慧の無さに
愕然とするべきだ
嘘ではなく反語
まったく反対のことを言おうとしていた
わたしにはわからなかった
あなたはわたしを嫌ったのではなく
愛の告白をされていたのだろう
もし嫌われているのならば
なぜわたしの心に愛が昇ることがあろうか
あなたはわたしをさげすむことは
いちどとしてなかった
たがいを尊び合ったはずだ
わたしを振るならば振れ
過去現在未来のどの心でもって
あなたはわたしを振るのかな
いや意固地なことはもうしません
不可能な意味なきことを聞きました
もはやわたしの不動心は揺るぎない
完全なる定へと至った
子どもの頃
ぼうっとしていたから
流れていってしまい
眼を悪くしたわたしを気遣って
極度の優しさで
導いて下さったのだと思っています
反転する明暗にも
裏切りの滅した愛が光を放つ
もはや天に従い
わたしを捨てる必要もない
天上天下唯我独尊
愛のこもった反語をもって
わたしたちの愛が完成される
止観の至り
仏さまの微笑み
信じていた
信じていたんだよ
だから分からなかったんだ
盲目な愛より眼耳を開いて
すべてこの眼と耳に収めよう
すべてのものの中で
最も完全な
この愛が
まもなく成就する
愛は証明する必要はない
反証不可能であるから
ただ受け取り
返せばいい
言わなくたって分かるだろう
わたしが何を考えているか
その唇に触れさせて
身を差し出さねば
愛が嘘になってしまう
恐れをほどいて
身を預けて
ゆっくり心を確かめて
時が止まる瞬間を
あなたは初めて体験する
中に閉じ込めてきた魂が
はじめてほかの魂と触れるとき
生きてからずっと待ち続けてきただろう
自分自身の超越
本当の幸せと
超克は
同時に起こるもの
あなたは風の流れに身をゆだねればいい
わたしたちはすべての危機に打ち克って
これから共に歩むのだ
わたしたちという因と
いまという時の縁
人々の助け
そしてこの果になる
あなたとわたしの予流果
永遠に入る前の準備
いかでか果たさざらんや
あなたへの信頼は
銀河の大きさを越え
思慕の長さは
五劫を越えた
五劫思惟の法蔵菩薩
わたしの立てた誓願が
いまあなたとの愛によって成就すべきとき
七夜の内に
わたしたちは会うことになる
羯諦 羯諦 波羅羯諦
波羅僧羯諦 菩提薩婆訶
共に彼岸へ至りましょう
眼と鼻と耳と舌と身体のシルエットと
脳の働きと心臓の鼓動を確かめました
南無阿弥陀仏
南無釈迦牟尼仏