生きていてもいいですか
杉原詠二(黒髪)
過去は変わらない
だから安心できる
未来は分からない
だから不安だ
人は皮肉に翻弄される
弱い人も強い人も
必ず弱点を備えている
それを夢がつく
わたしは善がいいものだと考えた
それのみを己の信条としてきた
だが私は時々不安に襲われる
わたしは不幸の骨の上に幸福に生きている
わたしは命の犠牲の上に成り立っている
わたしは矛盾に引き裂かれた存在だ
ほんとうに
わたしは生きていてもいいですか
お父さん
お母さん
わたしを産んでくださってありがとうございます
わたしはあなた方を
裏切らないために
とりあえず生きてみようと思います
死者の無念を死者が晴らすことは出来ません
無念とはこの世に残されたものですから
わたしは生きて覚って無念を晴らしましょう
もうすぐ無明の闇が明けます
夜の闇は眠ってやり過ごし
朝になったら起きる
いつまでもぼやぼやしていたら
死んじまうぜぇ?
墓石に名を刻んだら
骨も何もかもミサイルに変えて
気に入らない奴らの所へぶっこむんだ
生きて来ていやなことばっかりあった人も
言いたいことみんなあの世へもっていって
おしゃれをできただろう
みんなで美しくなろうとしただろう
そこに愛があっただろう
まがい物の美学でも
己をつらぬいたんだ
仲間もいた
ひとりくらい信じてくれる人がいたはずだ
誰に恥じることがあろうか
あなたはあの世で楽しい夢を見続けるんだ
すべての生者と死者へ―
待ち続けたね
あがき続けたね
何でも無茶苦茶やってみろよ
気兼ねなんてしないでいいからさ
どうせ誰も見ていやしないんだ
この世に花と咲け
一輪の花こそが美しい
責任回避?
しゃらくせえ
すべての重みを背負ってみろよ
俺の母親は今は
少し腰の曲がった年寄りだ