夏夜のトイレ
本田憲嵩
夜、開け放った窓から、
しとしとと雨の水の気配、
その少し生ぬるい涼しさに、
ぼくはなんだか妙にワクワクそわそわ!
夜、その湿った夏の夜風に混じって、
青々とした草木のにおいが、
さやさやと窓から運ばれてきて、
それだけでもぼくはなんだか妙にワクワクそわそわ!
そこにさらに何匹もの鈴虫たちによるとても美しい旋律線、
その隠れている草叢から、
透明な高音がガラスのように響いてきて、
もうそれだけでもぼくはなんだか妙にワクワクそわそわ!
ああ、それだけでも、夏、夏、夏、夏!
それら夏!
それら夏が窓を開け放った、
トイレにまで伝わってきて、
友達との楽しい会話をなんども中断しては、
立ち小便をしている、
ぼくの心は、なんだか無性にワクワクそわそわ!