蜩の夕刻
山人
一日の縁を、刷毛でなぞるように
蜩はかなしく、ひたすらに鳴いて
いたずらに夏は強度を増し
暑さはまるで言葉を持たなかった
川魚は消え入るような息で
わずかばかりの小さな淵にうずくまっている
風は腐敗し、重く深いため息のように
すこしだけ動いた
巨大な夏の塊の中の空白の日
酷使した体を沼の中に沈ませるように私は
やわらかくなった体を横たえていた
曇天は終日続き
明日から再び綴られる日記帳のために
乾いた声の
蜩の夕刻を過ごしていた
自由詩
蜩の夕刻
Copyright
山人
2025-08-02 16:48:56
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