裁判員日誌2-1
TwoRivers
この度、強盗致傷事件の裁判員として職務を全ういたしました。
この貴重な経験を記録し、皆様と共有したいという思いから、こちらに投稿しました。
裁判員に選出され、その一週間後、いよいよ裁判初日を迎えました。
裁判が始まる前に、裁判長と裁判官から、裁判の流れや刑事裁判の基本的なルールについて説明がありました。
特に強調されたのは、以下の点です。
・起訴内容の証明は、裁判の中で提示された証拠のみに基づいて判断すること
・その立証責任はすべて検察側にあること
・弁護側は「やっていないこと」を証明する必要がないこと
今回の事件は、全国的に注目を集めていた、
いわゆる**「匿名・流動型犯罪グループ」(通称:闇バイト)**が関わる強盗致傷事件でした
。そのため、裁判初日にはテレビ局による法廷撮影が行われることになりました。
撮影は代表一社が担当し、その映像を各社が共有する方式です。
撮影されたのは裁判官、検察、弁護士のみで、裁判員や傍聴人は入室前に撮影を済ませました。
法廷に入ると、傍聴席はすでに満席でした。
冒頭手続きと事件の概要
冒頭手続きとして、(1)人定質問、(2)起訴状朗読、(3)黙秘権の告知、(4)被告事件に対する陳述が順に行われました。
今回の裁判では、強盗致傷事件と、その前に発生した詐欺窃盗事件2件について審理が行われます。
冒頭陳述では、検察側が事件の概要や悪質性を、
弁護側は被告人の事情や配慮すべき点をそれぞれ主張しました。
この時点で被告人は詐欺窃盗事件について「記憶にない」と供述しており、
これが裁判の争点の一つとなりました。
また、長期間の精神鑑定の結果、被告人が「軽度知的障害」を有していることも、
裁判を考える上で重要な情報となりました。
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裁判中は厳かで、張り詰めた緊張感に包まれていました。
法廷への入室直前、厚いドア越しに聞こえる被告人の手錠を外す「カチャカチャ」という音が、
その緊張をさらに高めていました。
法廷内の誰もが笑顔を見せることはなく、
検察、弁護人、裁判官が粛々と手続きを進める様子は、まさに儀式のようでした。
被告人は30歳。軽度知的障害を抱えてはいるものの、
ごく普通の一般人に見え、また小柄なこともあり、
正直に言って強盗致傷事件を起こすような迫力は感じられませんでした。
ただ、被告人は4年前には専有物離脱横領、窃盗の罪で執行猶予中となっており、
犯罪を繰り返しているということから、どこか内面に潜む怖さは感じました。
検察の冒頭陳述の後、弁護側から反論の陳述がありました。
その際、私たち裁判員に語りかけるように発せられた弁護人の言葉が、今でも強く印象に残っています。
「皆さんはこのような事件は起こしません。皆さんは物事を論理的に考えることができるからです」
「被告人はそれがとても苦手です。軽度知的障害という特性を持っているからです」
「その結果、今回の闇バイトの報酬を受け取ることさえできず、捨て駒にされてしまいました」
私はその言葉を聞いて、不快感を覚えました。
刑を軽くするために酌量を求めることが弁護士の責務であることは承知していますが、
多くの人の前で被告人の知的障害や無能力を繰り返し強調することが、
彼の今後の人生に傷として残らないだろうか。
その思いは、その後の裁判中も私の心にわだかまりとして残り続けました。