わがままな夢
秋葉竹

六本木ヒルズがまさに爆誕した年に
私は産まれた
青い風が吹いていたという
赤い砂が舞っていたという
産まれ落ちたた直後から
鮮やかな記憶が残っている
なにものも許せないという
曲がらない針金で囲った想いだ
深い夜だったという
静かな冬だったという
罪ばかりが街中に転がって
まるですこし前に終わった
世紀末のようだったという
そして夢をみていたのを憶えている
幸せのために生きる意味を探す世界
転がり落ちそうな悪の道を歩まない人生
夜よりも明るい闇の中で微笑んでいる部屋
すき透るメロディーに纏わりつかれる
悲しみのカケラもないやさしい夢だった
今まで生きて来て
六本木ヒルズへ行ったことはないけれども
なにか彼女とは同志のように想い合っている
彼女が闇の中で聳え立つ切なさが
私の切なさを吸い取ってくれているのだ
六本木ヒルズには行ったことがないけれども
いつか死ぬ夜には行ってみたいと希っている
そして夢をありがとうとお礼を云って
彼女のほおにキスをして逝ってみたいと
すこしわがままな夢を抱いて今夜も眠るのだ








自由詩 わがままな夢 Copyright 秋葉竹 2025-08-02 10:11:09
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