原点
りつ
6歳だった
80cmの溝を飛び越えられずに
何度も何度も砕けたのは
歯が欠ける衝撃があった
頭蓋骨をぶつける痛さがあった
心底、怖かった
泣きながら家に帰ると
泣くな!と父が怒った
どうすれば良かったの?
痛さをありありと想像する力
制御できない幼さ
恐怖を閉じ込める以外
何ができたの?
泣きたい
※
思い出させないでよ
惨めなのも
情けないのも
弱いのも
怖いのも
嫌なの
そんな感情要らないの
怖い
怖い
怖い
いつだって怖いから
怖くない振りをして
理論で武装し戦った
頭を高く掲げて微笑んだ
本心が分からなくなった
こんなものを寄越せという
あなたは嫌い。
どうせ泣くのは私なのに
※
大人なら一跨ぎの溝
ちっぽけな溝
だけど幼い私にとっては
死の川を飛び越えるようなもの
歯と頭蓋骨が砕ける衝撃に
脚が震えた
怖さが粘着質な触れるほどに濃い空気となって
私を雁字搦めにした
泣きじゃくりながら家に帰ると
支配者は泣くなと命じた
私はこくりと頷いて
私自身を封印した
怪物のような恐怖を