この度、強盗致傷事件の裁判員として職務を全ういたしました。
この貴重な経験を記録し、皆様と共有したいという思いから、こちらに投稿しました。
裁判員制度について
裁判員制度は2009年に導入された制度で、国民が刑事裁判に参加し、裁判官と共に有罪・無罪の判断や量刑を決定するものです。
(詳細については、
https://www.saibanin.courts.go.jp/index.html)
裁判員に選ばれるまで
裁判員の選定は以下の流れで行われます。
調査票の送付:
まず、アンケート形式の調査票が普通郵便で送られてきます。
職業や現住所などの簡単なプロフィールに加え、辞退事由があればその旨を記入します。
名簿からのくじ引き:
調査票を基に作成された名簿から、裁判所でくじ引きが行われます。
質問票および選任手続書類の送付:
くじ引きの結果、裁判員候補に選ばれた方には、「特別送達」郵便で通知が届きます。
この郵便には、選任手続の日時と場所(地方裁判所)、持ち物の情報、
そして裁判員制度に関する各種書類が同封されています。
(特別送達について
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E5%88%A5%E9%80%81%E9%81%94)
選任手続き(地方裁判所にて):
地方裁判所に約40名の裁判員候補者が集められ、選任手続きが行われます。
ここで初めて、机上の書類を通して裁判の日程や報酬、そして対象となる刑事事件の詳細(事件内容、被告人の氏名など)が明かされます。
裁判官、検察官、弁護士の自己紹介も行われ、
裁判の日程や事件関係者との関連など、懸念がある候補者は裁判官と個別に相談できます。
私の場合は、この段階で3名ほど辞退された方がいました。
裁判員・補充裁判員の選出:
最終的に、パソコンによるランダムなくじ引きで、裁判員6名と補充裁判員が選出されます。
今回の事件では補充裁判員は2名でした(補充裁判員の人数は事件の規模や裁判期間によって変動します)。
選出された裁判員は別室に移動し、自署と押印の後、全員で以下の誓いの言葉を唱和しました。
「裁判員は、裁判に参加する際、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。」
その後、法廷の見学や裁判の進め方、心構えなどの説明を受け、この日は午前中で解散となり、
次週からの裁判に備えることとなりました。
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初めての裁判所訪問:
裁判所を訪れるのは今回が初めてでしたが、入館時の手荷物検査はまるで空港のようでした。
法廷という独特な空間はもちろん、オフィスエリアは県庁や市役所のような官公庁の雰囲気に近く、売店もありました。
今回の裁判を担当された3名の裁判官:
50代の男性裁判長、40代の女性裁判官、20代の女性裁判官とは直接顔を合わせ、
お話しする機会がありました。皆さん真面目な印象でしたが、気さくに話してくださり、
全く取っつきにくいということはありませんでした。
しかし、司法試験という難関を突破し、裁判で判決を下す立場にあるというだけで、威厳を感じずにはいられませんでした。
私自身も彼らと共に判決を下す人間の一人となるのだと、話をする中で現実味を帯びてきました。
実生活の中の裁判員:
最終的に裁判員に選ばれた瞬間は、少し夢を見ているような感覚でしたが、
すぐに自分の仕事や家族のことを現実的に考えなければなりませんでした。
各所へ連絡を取り、今後の生活に支障がないよう調整を進めました。
今回の裁判日程は3週間で平日9日間程度組まれていたため、
システムエンジニアとして働く私にとっては、職場の協力が不可欠であり、
週末に仕事を進める必要も出てきました。
選任されての所感:
貴重な経験であるという前向きな気持ちがある一方で、
裁判という未知の領域に対する不安ももちろんありました。
自分が何をすべきか、何ができるのか、どのように振る舞うべきか。
非日常的な環境の中で自分らしさを保ち、心の安定を保てるだろうか、といった思いが頭をよぎりました。
しかし、最終的には「何事も挑戦」という前向きな気持ちを、
簡単ではないながらも自分に言い聞かせ、裁判員としての初日を迎えることになります。
※裁判員の守秘義務について
裁判員としての守秘義務としては、
1.評議の秘密と2.裁判員としての職務を行うに際して知った秘密があり、
基本的に法廷で行われた内容であれば、話すことは何ら問題ありません。
1.評議の秘密:
どのような話し合いで結論に達したかという評議の経過等に関すること。
2.裁判員としての職務を行うに際して知った秘密:
事件関係者や裁判員のプライバシーに関する事項等。