人の道
岡部淳太郎

迷っていたので
さらに迷うことにした
あえて迷って
そのままずんずん歩いていった
すると 妹をあやめ
父をあやめ 母をあやめた過去が
この生き延びてきた道の上に覆いかぶさってきた
その過去を焼いて
骨がぼろぼろに朽ちるまで火にくべて
知らないふりをした
ああ これが過ちばかりの人の道なのだなと思っていると
ぼんやりとした明日が道の向こうに
陽炎のように揺れて
そのなかに 幻のような
父母妹ちちははいもうとの影が
こちらを誘うように浮かび上がるので
そちらの方へふらふらと
歩きだしていった
それを信じて
一日の罪を数えて
すべてを赦す者となれ


(2023年1月)


自由詩 人の道 Copyright 岡部淳太郎 2025-07-20 14:03:19
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