あめふらし
あらい



残るのはからっぽの部屋と、開かれた扉だけが、正しい それでもいま、ここに 破水したのは 空のほうだった みっつ折りのまま 寝返りを打つ 網のあいだで、骨が増え うしろむきにあったような 子宮の根を張っている

むしろ、ぬるい風は、すでに古びてしまった なかったほうの干潟が 吸い込むたび 滲み出ていく 「それなら永遠にとじたまま」と鍵穴が笑い 「あけなくてもいいの」と砂嚢が答える 「あけてもいいの」と朝焼けが囁く

急に、なにもかもが語彙になりすぎた 百の瞳が埋め込まれた夜の内側で、ユスリカ!ユリイカ!って言ったの。しぃ、というかけらがぱちんと立てた 指先で拾いあげるinlay 覗き込めば未了であることについて。

微笑をつくるたびに《みずかさ》を注ぐよう ことばと、ことばと、とけあわず、むしろうえていた あれは刺し貫く。まだ気圧に跳ねる花器にこびりついた 埠頭のくさび いまも触れようとするたび、そこからおちていく/含まれる。前に ぐず、と崩れた、

ひきだして喉をとじる 螺子 さまよいつづける もう意味はこわくてさわれない 呼吸器がまわる天蓋 ふくむと、やあらかい織りめ 窓辺に。天井裏に。唇の影に 仮止めされたショーケースに並ぶはすず 萌芽だった「わたし」と、しめりけ 凝視している。溜息、……ただし、ひかりのむこうで


自由詩 あめふらし Copyright あらい 2025-07-19 14:05:56
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