続いていくのかな
そらの珊瑚

 「氷」

口のなかの体温で氷がほどけていく

世界が終わるかのような
とどろきを上げて
北極の氷山も海にくずれおちていく

さよなら

夏の真ん中で
わたしが失ったのは
透明な
ひとつの瑞々しい氷


 「みんなさみしい」

日が沈んだあとの
はじまりのような
おしまいのような
場末のストリップ劇場の
緞帳のような空に
黒い鳥の群れがゆく
やがてそれらは隊列を組んで
大きな鳥のかたちになった

ふるさとの川に
紙のひとがたを流す
ここから
そこから
過ぎ去った日々からも
ひとがたは流される

小さなひとがたが
よりそいあえば
いつしか
ひとかたまりの
大きな人のかたちになって運ばれていく


 「こけももの家」

空き家になった祖母の家に
今年もたわわに実った赤い実で
ジャムを煮る
てんさい糖と檸檬果汁
きれいに洗ったアオハタジャムの空き瓶は
待ちくたびれてあくびした

こけもも
こけももも
こけもももも
ジャムを煮ている時間は
やがて道になり
歩いていけば
おもいでは
みんな溶けかかっている





自由詩 続いていくのかな Copyright そらの珊瑚 2025-07-14 11:31:53
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