枯れ木と泥
成澤 和樹

老人を見ると枯れ木を思い出す
無駄なものは一切取り払われ、水を通すだけの老木だ
水を通す、それだけしか出来ない全く透明な存在だ
錯覚に過ぎないが
若者にはそう見える

若者を見ると泥の匂いを思い出す
あれやこれやと興味を持ち、何一つ卓越しない飛び散る泥だ
自らを汚し、周りの人間をも汚してゆく、濁った存在だ
錯覚に過ぎないが
老人にはそう見える

老人とは、若者とは、かくあるべき
そうでありたい
若者は老人の擦り切れたボロを、角の取れた丸い石を
憧れのまなざしで見る
老人は若者の白い新しい衣服を、鋭い角を持つ石を
温かいまなざしで見る

老人は若くあれ できるだけ頑固に
若者は見境をつけよ できるだけ思慮深く

私は、泥のついた枯れ木になりたい
私は、角の取れた鋭い石になりたい


自由詩 枯れ木と泥 Copyright 成澤 和樹 2005-05-30 17:07:04
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