蒼い目の夢 
月乃 猫


悲しみを孕む
十三夜の月の満欠け

喧噪に街猫が 見る
自らの影の先に
山里を住みかの やせたクロネコは、子猫の蒼い目をうしなわず
それでいて寂しさをたたえ
まなざしは 紛うことなく 月の光をはなつ


階段のしたのねぐらに
細いヒールの音を響かせ
女たちは化粧の香りを たばこのけむりにのせては、
雌猫にきまぐれにえさをやる 
寂しさを 生きとし生けるものたちは、分配してきた

忘れられぬ夢の その行き着く先をもとめ
山里への旅たち、ネオン灯の 喧噪の夜を別れ

ここには生き物をいつくしみ、
家の陰に 甘い鳴き声はもとめ合う息を吐く

雌猫はひとり 二匹の仔を生んだ
そして
雑草のおいしげる 下水溝の端 つゆのしずくに濡れそぼり
女に出会う

生きる水を 食べ物を 糧をもとめ
自由の対価は 限りない束縛/子の安寧ならば
親猫の命は・・・
女は どうしてか
生きることをあきらめた 母猫の息遣いを耳にした

動かなくなった母の乳を吸う子猫の
それが、この家でのはじまり
暖かなねぐら きれいな水は 人口食材は、
子猫たちへの 幸せのおくりものを装い
人知れず 街猫は永い眠りのなかへ

音をたて ミルクをもとめ、
何もしらずに 小さくまるくなる お前たちの
あらたな親となるものの
遥かな 前世からの道なりが

今ここに 完結する


自由詩  蒼い目の夢  Copyright 月乃 猫 2025-06-30 09:38:00
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