蒼い目の夢
月乃 猫
悲しみを孕む
十三夜の月の満欠け
喧噪に街猫が 見る
自らの影の先に
山里を住みかの やせたクロネコは、子猫の蒼い目をうしなわず
それでいて寂しさをたたえ
まなざしは 紛うことなく 月の光をはなつ
夢
階段のしたのねぐらに
細いヒールの音を響かせ
女たちは化粧の香りを たばこのけむりにのせては、
雌猫にきまぐれにえさをやる
寂しさを 生きとし生けるものたちは、分配してきた
忘れられぬ夢の その行き着く先をもとめ
山里への旅たち、ネオン灯の 喧噪の夜を別れ
ここには生き物をいつくしみ、
家の陰に 甘い鳴き声はもとめ合う息を吐く
雌猫はひとり 二匹の仔を生んだ
そして
雑草のおいしげる 下水溝の端 つゆのしずくに濡れそぼり
女に出会う
生きる水を 食べ物を 糧をもとめ
自由の対価は 限りない束縛/子の安寧ならば
親猫の命は・・・
女は どうしてか
生きることをあきらめた 母猫の息遣いを耳にした
動かなくなった母の乳を吸う子猫の
それが、この家でのはじまり
暖かなねぐら きれいな水は 人口食材は、
子猫たちへの 幸せのおくりものを装い
人知れず 街猫は永い眠りのなかへ
音をたて ミルクをもとめ、
何もしらずに 小さくまるくなる お前たちの
あらたな親となるものの
遥かな 前世からの道なりが
今ここに 完結する