メタファー
たもつ


玉ねぎが自分で自分の皮をむいている

オレハ ドコニイルノダロウ

いくらむいても自分は出てこない
それでも玉ねぎは自分をむき続ける

オレハ イッタイ ドコニイルンダ

その間にも地では虫が低く鳴き
空ではいくつかの星が流れている
とうとう玉ねぎはすべての皮をむき終え
茫然と立ちつくした

オレガ ドコニモイナイノハ ワカッタ
ソレナラバ オレガ ドコニモイナト ワカッタ オレハ
イッタイ ドコニイルンダ

翌朝 台所でばらばらになっている玉ねぎを見ると
その家の女房は気味悪がってすべて捨てた
どうせ昨夜何かあったんだろう と夫は呑気に言った
いずれにせよ
メタファーなどなくても生きていけるという点において
二人とも共通して同じだった



自由詩 メタファー Copyright たもつ 2005-05-30 09:47:28
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