魔女のサバト
這 いずる



目を
目を向けられて
目を向けて
大丈夫だよ と言う
私の大丈夫じゃない人生を乗せた大丈夫は
君に響いて
君を救ってくれて
響いて嬉しくて
私はにっこり笑って
私を救いはしなかった

爪を弾く悲しくつまらない気持ちが
土曜日に来る
大雨が降っていて遊ぶには
ちょっとどうかなってなるけど
暇な平日の代わりに
土日は大げさに遊ばなきゃ

※青空を風船で飛ぶ
 アメリカンな原色のケーキを食べる
 大きな河まで遠乗りに行く

遊んで楽しくて充実した休日を過ごさなきゃ
平日の灰色の悠久の退屈さと寂しさと
釣り合いが取れる、取れるはず
夢のような夢であるような夢の色の
楽しいこと楽しいことを探さなきゃ

※魔女のサバトに参加する
 手のひらを蜘蛛を這わせる
 夜空の星を取る
 月に舟を出して夜鷹を釣る
 蝋燭の灯にカモノハシを見る
 海猫の尻尾をつかむ

楽しいこと
目を向けられて
私を
悲しくて寂しいのを目の裏に押込めた私を
悲しくて苦しくて寂しそうな目の奥の君が
私を選んで
遊び相手に気まぐれで選んで
楽しくて楽しいはずの楽しいことが
楽しかったよねって目で見つめて
大丈夫
楽しかった
楽しかった
こんな悲しい怖い苦しい気持ちも無くなるんじゃないか
って期待しすぎたけど
魔女のサバトで海猫を捌いて
星を餌に海ほたるを釣ったのも
原色のケーキでパーティして
カラフルな風船飛ばして空が染まったのも
私をどこかへやりはしなかった
私は
私は

私が人間の形をしているのが嫌で
私は私じゃなくて

私は


自由詩 魔女のサバト Copyright 這 いずる 2025-05-17 10:41:09
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