回復論 兆し殺し
ただのみきや
喰うか喰われるか
皮まで気持ちをかみしめて
キミハクエドからきしぼくは
暗い傀儡 インドの残像
九字を切っては籤を引き
舵を切っては網を引く
きーりきーり舞ったら荷を縫って
カーリカーリ呼んだら喪を舞って
カイモノシタイノカ
死体 死体 社会的写体の
視姦されるしたいされたい死体
喰いものにされる詩体
衰退する迷宮の肢体
買い物する? したい?
解体! 解体! ご遺体に敬礼
さらりとして さわれない正体
込められてない
埋められてない
個体としの期待
痙攣こそすれ
恋するシェイカー
悔い打つクエイカーも
ペンテコステのあの夜から
震える陰部
八重咲の母
はまぼうふの
すみそあえの
はじめからの
蹄砥ぐ母
狒々と母
ひひひひはははは
垂乳根のママの
その間に間に
わがままなまま
蓮をつかめず溺れて死んだ
頬にとまったカワゲラの
声音を模したカワセミの
怖気立つようなオフィーリアの口形!
つめたく濡れた下着
汚れた下着なめらかに
ぬめるウナギの目の中で
感染する
澄み切った朝の自己愛
ああレモン色の思想膿漏
自慰 自慰
ああ納涼大会南京たますだれ
虐殺自虐 毒殺可逆
天秤天秤! 天下天秤
憐憫憐憫! 甘美な憐憫
売りものにされた幼児気質
過失指されつ猫も杓子も
する しない するもしないも
ナカヨシコヨシ
幸子と良子
差しつ差されつまた二日酔い
印を記すサルの尻の知られざる
恐怖のたわわ
柿喰わぬ教父! 隠蔽 隠蔽だ
喰わんの喰わん すべては喰わん
逆転の失態
魅惑の失墜
ことばの福笑い
高学歴犯罪者たちの
あの宝毛的譫妄を見よ!
蟻か梨か
愛を鎮めて
機械化開花の菊の御紋も
聞くも怪なら聞かぬも怪か
快! 快! 愉快な解だ
自分が邪魔でしょうがないのでしょう
詩の乾物
今もきみが好き
ぼくをさらって来世まで逃げてくれ
在り得ないくらいの祈りは色気を帯び
狂えないからこそ快楽は黄ばんでいく
枯れたことば集めて燃やすしかない
孤独を受け入れない限りは
ぼくはきみのあばらの宿り木
ぼくの比丘尼は歳をとらない
ビキニがよく似合う地獄の生まれ
空間転移
斜視写仏念仏料理にことかかず
モンローモンロー
勤労者の感情的カラーを見よ
問答! 問答無用で仕掛ける問答
微妙なうずき
ああ牡蠣よ苔色よマドモアゼルよ
ミス・ミステリアス
黒い桃の血走った種
写楽極楽喜怒哀楽
車仕掛けで
選挙 選挙
地獄を占拠
きみのあたまで手を洗う鬼の群れ
マドロスのたましい
マンドリンバンドネオン
座敷童を匂わせて
静かに爆ぜるめくら星
あの老女の背に乗って
老女の背にまたがって
着のみ着のまま咬んだ耳きみの
うず巻き管に潮満ちるころ
膝折り指つめ祈る影の群れ
初穂は踊っている
ホトトギスの鳴く墓の傍
まつ毛の森の迷い蛍
閃光で網膜を焼き
未来を切り裂いた
少年の財布の中に隠されたまま
干からびた避妊具 五月の亡霊
墓墓母の墓
寂滅の甘噛みに
捲れる空 見たか
見えたか 下着の色は
彼女は猛禽の目でガラスを溶かし
溜息からビジョンを孵す
剃刀を嗅いでいるきみの
ノートに新しいポーズの死体が放置される
ヌードで笑う
甘いシャドー 雨に犯される耳
まみえるもの
みまかるもの
めぶくみどりに目を抜かれ
時代遅れに首絞められて
ぼくらは馬をむさぼり喰う
まっとうに狂う
至極 ちょんまげぜんとして
喰らい嫌い狂う
背骨の溶けるまで
ああ骨董──恥をさらして本音を断つ
(2025年5月11日)