路地裏の貴婦人
栗栖真理亜

水に滴る青紫の鮮やかなる宝石に暫し眼を止め
こころ奪われる

どんな貴婦人よりも麗しく気高く天を見上げるその姿は
地に足を着けた他の生き物逹をも圧倒させる力となり
忘れかけた感性を呼び起こす糧となる

一枚一枚の舌先に透明な雫を乗せて憂いすら見せぬその姿は
降りかかる災難すら跳ね飛ばし
また、自らの栄養として吸収し
緑色の四肢を伸ばして可憐なる造りとは裏腹に逞しく活きてゆく

天の憂いもこの紫のドレスを纏った貴婦人にはとうてい敵うまい
どんな曇り空も彼女の微笑みひとつで
すぐさま掻き消えてしまうだろう

なぜなら、天は彼女の味方
路地裏にひっそりと佇む貴き彼女を厳しくも優しく見守る自然は
決して、放ってはおかないのだから


自由詩 路地裏の貴婦人 Copyright 栗栖真理亜 2025-05-06 10:42:17
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