朝のハモニカ
大町綾音
「よふけのおいのり」
おいのりは気もちがよくって
あたらしいシャツに
あたらしいこころ
あたらしい宝石を身につけて
あたらしい体すら手に入ると
そんなふうに思っていたけど
よふけて一人さびしくって
頭をたれる
夜のせんめんだいに腰をかける
鏡はぼくを見ているけれど
ぼくは鏡を見ていない
だからひっそりと寒くって
すべて忘れるのがいいのに
ま夏のすとーぶなんてない
ぼくは寒さにこわれている
ああ、たすけて?
たすけてかみさま
みぎからひだりへとかたむく言葉が
ぼくの胸のおくをさらって
またぼくをやみにほうりだすんだ!
ひとりあることはさびしい
おいのりはやくにたたない
ひとりあることがかなしい
まっさらないのりで救われたい
どうかおいのりを止めないで
この夜に……
「ふるーつぽんちでは」
ふるーつぽんちでは
お腹いっぱいにならないね
「だんだんに」
だんだんにことばがなくなっていくの。