雲のひとり言
「ま」の字

私は雲です
風に押し流されるものです
こうしておおきくなりはしましたが 
いつどのような原理ことわりに依って生まれてきたものか
さだかな憶えもありません
すうすうと胸がくふしぎな気持ちで往き来するこの空に
このさき
どのような転変が待つやも分からぬ
みずから知らぬまの流れにあるものです
耕作のあいまの休憩に
丘の上から見上げる人びとが
つぎつぎ遷りゆく夥しい雲のなかから私を見分けることなど
かんがえることすらない
そのようなものです

雲のひとり言
雲のひとり言
雲のひとり言

蛸のような形にされたうえ
いっせい立ちあがる壁のようなものに ぐるり取り囲まれたことも

きみのひとり言
おれのひとり言
雲のひとり言

だが
浮ぶのは自由。

風が俺らをどう吹き廻そうと それでも
浮ぶのは

俺が自由だ

雲は

・・・・・・

(いや



風に流れて
裂けて 崩れて 遠ざかります




                 二〇二五年春(六二歳)


自由詩  雲のひとり言 Copyright 「ま」の字 2025-05-04 23:28:16
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