五月
夏井椋也
なにやら
胸の奥が粟立って
仕方がないから
五月を
描こうと思った
ところが
緑の絵具を切らしていて
仕方がないから
青と黄の
絵具を混ぜてみたが
五月にはほど遠い
まるで
あなたとわたしの沈黙を
どんなに混ぜても
恋に
ならないのに似ている
が
そうだ
あなたを呼び出してみよう
その素っ気ない素振り
そのきっぱりした笑顔
その嘘を塗らない唇
その心地好い言葉の乾き方
なにより
あなたが五月だった
自由詩
五月
Copyright
夏井椋也
2025-05-03 12:19:17