五月
岡部淳太郎
五月は淋しい月
新緑の匂いに惑わされながらも
それらと一つになることのないジレンマ
暑くなり始めた気候に
責め立てられているような気分
五月蝿い虫どもがまとわりつく
ありえない煩わしさ
太陽は本気になる前の予行演習
それに備えて 人も準備する
そのことの 予感のような淋しさ
没入する前に我が身を振り返る冷静さ
それでも人は通り過ぎ
それぞれに離れている
恐ろしい時は準備されているのに
それに気づかないふりをする
空気が濃くなる前の煌めき
憧れは静かに諦められて
私の孤独は
五月の空の下にある
(2025年5月)