安らかな茫々
atsuchan69

白い牙を覗かせて、
獰猛なうねりが崩れ落ちる
老いた小舟は
海の奈落へ吸い込まれてゆく

ゴオオオーと大波は唸り、
水の壁をふたたび聳え立たせる
曇った空には、
騒ぎ啼く海鳥たちが浮かんでいた

ギイギイと軋み、
船底から水が沁みた

想いは飛沫とともに沈む
揺らめく砂の丘に、
ささやかな幸福と修羅が埋もれていた

茫々たる日々も、
ふうっ、白砂に横たわる





自由詩 安らかな茫々 Copyright atsuchan69 2025-05-01 05:21:13
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