反芻
凍湖(とおこ)
印画紙に染みついた影
人生から落とすまいと誓っていたものから
手を離した瞬間を覚えている
何度も何度も反芻する
記憶が消化器官と口内を往復する
輪郭がとけ筋も擦り切れ味もなくなる
そんなになるまで飲みくだしても
まだ喉元に込み上げてきて
うっと両手で口をおさえる
閃光に焼き付いた影に「もしも」はなくて
また味のしない残渣を噛んで
すこしも吐き出さずにまた胃へ押し戻す
口をおさえた指のすきまから万が一にももれないように
きゅっと口をむすぶ
もうずっと胃液に焼けた喉が痛い
琵琶湖の水を飲みほしても
まだ痛いだろう