Give 'Em Enough Rope
ホロウ・シカエルボク


リアリズムは単純バカの詩的表現みたいになっちまった、誰もが一番わかりやすい手駒だけを持ってカタがつくまで乱発してる、それを真面目さだなんて果たして、気付いていないのか開き直っているのかいったいどっちだろうね?剛速球はコントロールを失いがちさ、隣のレーンでストライクを取ってるような奴らが多過ぎる、真実は足元に落ちていたりしない、徹底的に吟味したってそうそう理解出来たりしない、何年も経って初めて朧げに掴めることだってある、感覚で理解していても脳味噌はそうじゃないことだって頻繁にある、まあ、そういう時はなんとなく次に行こうっていう気になれるものだけどね、常にそういうアンテナを張っていればね…まるで早押しクイズみたいだなと思うことがある、先にボタンを押して正解を出した奴の勝ちってなもんさ、ビーチフラッグと言ってもいい、先に取ったからなんだって言うんだい?もの凄く幼稚で在り得ないほど薄い、そんな人生をどれだけ生きたってどんなものにもなれないさ、手押し相撲が強いとかキャベツを千切りにするのが早いとか、特技以上のものにはなりはしないぜ、俺は基本的にすべての事柄は熟考されるべきだと考えているよ、考えれば考えるほど答えへのルートは増えていく、枝分かれしていくんだ、そしてそれには上限なんか無い、果てしなく増えていくんだ、だけどそう、これは頭でっかちなやつとか、見た感じだけで決めちまう連中には絶対理解出来ない感覚なんだけど、身体が感じている状況、空気とか質感、そんなもので判断していけるものなんだな、でもそれは金庫破りみたいなもんで、きちんと集中していないと些細な違いを見逃してしまう、僅かに音が高いとか低いとか、あるところだけ重く感じるとか軽く感じるとかね、それは日常の感覚では絶対に気付けないようなものだ、意識してあらゆる感覚がそこにあるなにかを知ろうとしていない限りはね―しかも、そいつはのめり込んでしまうと気付けはしない、肩の力を抜いて、出来るだけ小さな尺度で見つめ続けないといけない、これにはコツなんてない、そういう状況が存在することを知り、何度も繰り返して掴み方を覚えていくのさ、俺の言ってることわかるよね?刀鍛冶に関する論文を読んだからって、刀を打てるようにはならないってことさ、五感のすべてが、あるいは第六感も含めてなのかもしれないけれど、とにかくすべてがそれがどういうものなのか理解していないと、場の真実というものを掴むことは出来ないということなんだ、テキストについていくら語ることが出来たとしても、言うだけのものはあるというテキストを差し出せないのなら黙っていた方が賢明ってもんだろう…つまりこういうことなんだ、まるまると肥えた男が筋トレの知識を延々喋り続けていたとして、君はそれを信用出来るか?―これはどんなジャンルについても言えることなんだけど、第三者の語る権利なんて俺は重要視しない、他の視点という意味以上のものはそこには存在しない、階段で上ってきたやつに、エスカレーターで上ってきたやつが「遅いね」と言う、批評なんてどこの国でもそんなようなものだろう、履きもしない靴を買い込み続けるコレクターに歩くことの意味なんてわかるわけもない、わかるかい、俺は本質の話をしているんだ、筋トレを語るなら鍛えてみるべきだし、靴の価値を語りたいなら履いて歩いてみるべきだ、こんなの当り前のことだぜ、口先だけでどうこう出来るような話じゃない、意見は証明されなければならない、自分が言っているのはこういうことだというものを差し出せないのなら無意味だ、言葉を並べるだけならコンピューターにだって出来る、個が個である理由―アイデンティティなんて陳腐なことは言いたくはないけれど、誰かが誰かである理由、それが行動や選択であるべきだ、本能と理性のバランスが取れていればどんな道でもきちんと歩くことが出来る、格好をつけようとするから道を踏み誤るのさ、解答をいくつ持っているかじゃない、いくつの地点を通過して、どれだけのものをそこから拾ってきたのか、そしてそのうちのどれだけが自分の血肉となったのか、拾わなかったものは本当に要らないものだったのか、それを拾ったと仮定して、それは自分のどんな部分に影響を与えていたのか、精神と肉体は得たものを常に分解しながら全身に循環させる、それによって自分自身が得も言われぬ昂ぶりを得ることが出来たなら間違って無いってことさ、神父な結論だからって、シンプルに遂行出来るとは限らない、むしろそんなことはほとんど無い、身体を作るのはたったひとつの食物だけではないだろう、この世にごまんとあるいくつもの食いものがたったひとつの身体を作っている、目に見えるものから目に見えないものを叩き出すんだ、そいつを捕獲して細かく検分していけば次のポイントはぼんやりと輝いて見えるだろう、適度な真実に惑わされるな、届かない真実だけが本命だ、すぐに出る答えはドブに捨てておけ、獣のようにあらゆるものに食らいついて飲み込んいけば、いつかそれまで知っていたはずの言葉が違う意味を持っていることに気付けるだろうさ。



自由詩 Give 'Em Enough Rope Copyright ホロウ・シカエルボク 2025-04-12 18:09:53
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